2009年10月18日

02: パレード

「この前ケータイ買ったんだよね。」
「ああ、私もケータイ持ってるよ。固定電話もあるし。」
「固定電話もあるの!?」
「まあ、といってもかける相手はほとんどいなんだけど。。。」

リアとケータイの番号とメールアドレスを交換したのは、こんな会話がきっかけだった。そのころはまだ学期が始まったばかりで、お互い友達も少なかった。だからこうしてアドレスを交換する友達が出来たことを頼もしく感じた。

この時に聞いたアドレスが役に立つ機会は、以外と早く訪れた。新聞で見つけたイベントに一緒に行こうと思ったのだ。それはリオのカーニバルをうんと小さくしたようなパレードで、リヨンの町の中心にある第2地区のTerreaux広場からBellecour広場まで色々な団体が踊り歩くというものだった。

実際のところ、僕は特にそのイベントに興味があったわけではない。ただ、日曜日だし、どこかに出かけたかっただけだった。僕は早速リアにメールを送った。

返事はすぐに来た。「もちろん!私もちょうど友達とパレードを見に行こうと思ってたところ。もしよかったら一緒においで。3時にオペラの前で待ち合わせしてるから。」

そして当日、僕はオペラへと向かった。

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2009年10月15日

01: Lia

リアはいつも一番前の席に座っていた。40人ほど入る少し大きめの教室は、いつも3分の一ほど埋まっていて、これから一年間をフランスで過ごす留学生たちの活気にあふれていた。フランスの大学に慣れるため、現地の学生に先立って、9月の始めから留学生のために準備コースが用意されていたのだった。学生の考えることなどどこの国でも似たようなもので、あまりみんな一番前の席には座りたがらない。

そして彼女はひとりだった。留学生たちはまず、自分と同じ国か近い文化の国の友達をつくる。イタリア、ドイツ、スペイン、イギリス、、、近隣のヨーロッパの国からは学生の数も多かった。カナダ、オーストラリアなどの、英語圏からの学生も目立った。もちろん日本人もいた。(みんな自分の国の言葉で話していたので、自己紹介をしなくとも、誰がどこの国から来たのか予想がついた。)だから、その中でひとりでいるのは、同じ国の学生がいないためか、自ら好んでそうしているためかどちらかだということはなんとなく分かった。

一番前に一人で座っている類の子は友達になりやすい。それまでの経験からそんなふうに確信していた僕が彼女に話しかけるのにそう日数はかからなかった。

「プルースト、好きなんだって?」

フランス語で僕は尋ねた、、、などと書くと、いかにもキザな感じだけれど、授業でいつかプルーストが好きだと答えていたのを思い出して、(僕はプルーストなど一行ぐらいしか読んだことがないけれど)そう尋ねた。

「うん、まあ。」
「けっこう珍しいよね、プルーストが好きって。」
「そう?」

リアは独特のハスキーな声で答えた。それまで聞いたことのない、ずいぶんと特徴のある声だった。

「どこから来たの?」
「ブラジル。」

ブラジル。彼女はそう答えた。しかしその時、その国の響きは、僕の中にこれといって特別な感情を呼び起こしはしなかった。

posted by aye(あい) at 08:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ブラジルへの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月11日

00: ブラジルへの道

2009年8月25日、僕はサンパウロの空港に拘束されていた。ブラジルに入国するためのビザがなかったのだ。空は曇っていて、あまり動かずじっとしていると少し肌寒かった。出発ゲートに通じる廊下のガラス張りの壁から、離陸を待つ飛行機が見えた。

時計は8時を回っている。朝6時前に到着したのだから、もう2時間経ったことになる。この先まだ何時間もそこで過ごすことになりそうなことは、簡単に想像できた。

突然目の前に投げ出された空白の時間を前にして、僕は、なぜそもそも地球の反対側まで来ることになったのか考えていた。一年前は、自分がここに来ることになろうとは夢にも思っていなかった。それが現に今こうしてここに来ている。それにはもちろんきっかけがあり、過程があり、また数々のエピソードがあるはずだった。

僕はノートを取り出し、これまでに起こったことを、少しずつ思い出しながら綴り始めた。
posted by aye(あい) at 16:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ブラジルへの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月11日

N'importe quoi

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« N'importe quoi »

Quand je me suis réveillé, je me sentais super mal
Je ne pouvais plus bouger, ce qui n'était pas normal

J'aurais aimé que quelqu'un vienne m'aider à en sortir
Sauf que personne n'était là, j'étais en train de mourir

Mais non, non, non, non, non, non, non
C'est n'importe quoi, c'est n'importe quoi
Mais non, non, non, non, non, non, non
Je n'y crois pas, je n'y crois pas

Je me souviens qu'on m'a dit, que le monde était corrompu
Absolument pas d'espoir, c'est pour ça j'étais abattu

Mais non, non, non, non, non, non, non
C'est n'importe quoi, c'est n'importe quoi
Mais non, non, non, non, non, non, non
Je n'y crois pas, je n'y crois pas

Je vois déjà des étoiles
Mais je suis toujours dans mon lit
Cette maladie est-elle fatale
Qui va ronger mon esprit ?

Mais non, non, non, non, non, non, non
C'est n'importe quoi, c'est n'importe quoi
Mais non, non, non, non, non, non, non
Je n'y crois pas, je n'y crois pas

『でたらめ』

今朝起きると、めちゃくちゃ気分が悪かった
ぜんぜん動けないし、ふつうじゃなかった

誰かが来て、助けてくれれば良かったけど
誰もいなくて、僕は死にかけていた

でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
そんなのまるでおかしいよ、おかしいよ
でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
僕は信じない、信じない

誰かが言ってた、世界は腐りきってるって
希望なんか全然なくって、それで僕が苦しいんだって

でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
そんなのでたらめだ、でたらめだ
でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
僕は信じない、信じない

もうすでに星が見える
けれども僕はずっとベッドの中
これって死の病?
精神をしゃぶりつくすような?

でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
そんなのでたらめだ、でたらめだ
でも、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン、ノン
僕は信じない、信じない
posted by aye(あい) at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月10日

あけましておめでとうございます

長い夜だった。

2009年1月1日、午前5時。人影まばらなリヨンの町を歩く。痛む足を引きずりながら。夜はまだ明けない。歩道の明かりが、路地をひっそりと照らしている。たまにすれ違う人々が、「良い年を!」とささやかな言葉を投げかける。

長い夜だった。大晦日の夕方、カフェで少しまったりし、別の友達の家で年越しをした。年末の過ごし方としてはそれだけでも十分だった。けれども、リヨンに残る他の友達たちにも新年の挨拶をしたくて、日付が変わってからさらに、町の中心部にあるアパートを訪ねた。

すべての友達がリヨンに残っていたわけではない。むしろクリスマスから年明けにかけて自分の国へ帰っている者が多かった。イタリア、ドイツ、ポーランド、フィンランド、カナダ、そしてフランス国内、、、彼らにとってこの時期は、家族と共に過ごす大切な時なのだ。

それでもリヨンに残る者もいた。リヨンに住んでいる者もわずかながらいる。そして大晦日までに戻ってきた者たちも。僕は、ずっとこの町にいたので、せめて何人かはそこにいて欲しいと思っていた。

4階にあるアパートのドアを開けて中にはいると、リビングにはよく知ったメンバーがいた。薄暗い部屋にろうそくの明かりが揺らめく。夜も更けて、ゆったりとお酒を飲みながら雑談している。そのひとりひとりに挨拶して回る。

「パリどうだった?」「良かったよ!歩きすぎてひざが痛いけど。。。」「どこ回ったの?」「いろいろ行ったけど、、、大きな古本屋とか素晴らしかったなぁ。。。大量に本を買ってきたよ。ほら、前におすすめしてくれやつあるじゃん。あれも買った!」

そういえば、そのおすすめの本を聞いたのは、初めてその子に会った時だった。4人のアパートに50人ぐらいがひしめき合う、やたらとにぎやかなパーティーだった。彼女は元々たくさん話すタイプではないし、あの頃は、会話もとぎれとぎれだった。そう考えれば、今では、ずいぶんと仲良くなっている。ケベック特有のアクセントも、今は心地よいと思うようになっている。

彼女だけではない。ここにいるメンバーは、そんな風に、何回か同じ場所で顔を合わせるうちに少しずつ仲良くなっていった人たちだった。

音楽のボリュームが上がり、誰かが静かに踊り出す。となりで話していた者たちも加わり、踊りの輪が広がってゆく。「ドイツ語では、「音楽に身をゆだねる」って言う言葉があるんだよ!ほら、こんな風に!」ドイツ人の女の子が、そばにいる男の子に踊るように促している。最後には、全員が踊りの輪に加わった。

このメンバーで踊りに行ったことは幾度となくあった。近所の小さなクラブが主な行き先だった。けれども、いつもどこか、いまいちみんな乗り切れないところがあった。それは、音楽のせいだったかもしれないし、どぎつい照明のせいだったかもしれない。でももっと、ほんの些細なことだったのかもしれない。

けれども、この夜は、自然とみんな楽しんでいた。不思議なつながりがあった。アパートの一室でラジカセから流れる音楽。ろうそくの静かな光。そしておなじみの顔。すべてが年の初めという特別な時と交わって、特別な時間を作り出していた。何か変わったことをしたわけではない。たぶんそれは、すごく繊細な条件の重なりだったんだと思う。でも確かに、そこにあったのはいつもとちょっと違う空間だった。

一年の終わりにそんな夜を過ごせたことが、とても嬉しかった。

(この夜、パレスチナではハマスの一1人のリーダーが殺され、バンコクのクラブでは火事で60人以上が死に、フランスでは例年より多い1147台の車が燃やされた。でもそれを僕が知るのはもう少し後のこと。)

午前5時、何かが動き始めた気がする。ゆっくりと眠りから覚めるように。まだ町はひっそりとしている。でも僕の新しい年は、確かに始まっていた。
posted by aye(あい) at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | リヨン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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