2009年10月29日

03: Batucada

もう30分以上経つだろうか。僕はオペラの前で待っていた。道はパレードを見に来た人で溢れかえっている。リヨンにこんなに人がいたのかと思うくらいだ。行列が通る予定のTerreaux広場とBellecour広場の間の周辺では、交通規制がされていて、車や自転車は入れないようになっていた。あまりに人が多いため、少しの距離を移動するのにもいつもの倍近くの時間がかかった。

そろそろパレードが始まりかけたころになってやっと、リアは友達をぞろぞろ連れてやってきた。彼女以外は皆会ったことのない面々で、国籍もさまざまだった。その中に、同じくブラジル人のタイッサ(Taïssa)も混じっていた。

「Taïssaの最後のaは弱く発音するんだよ。聞こえるか聞こえないかぐらいに。」
「えっと、こんな感じ、タイッサ?」
「まあそんな感じかな。。。」

人生で最初のポルトガル語講座だった。

パレードはわりとこじんまりしていて、それぞれのグループの衣装なども手作り感があった。10数のグループが、それぞれ工夫を凝らした衣装を的って、これまた工夫を凝らしたデコレーションを纏った車から流れる音楽に合わせて踊りながら通ってゆく。リオのカーニバルをうんと小さくした印象だった。(といってもリオのカーニバルを生で見たことはないけれども。。。。)僕らは道端で配っていたプログラム冊子をもらうと、目の前を通るグループと照らし合わせて、解説を読んだ。

周りを見渡すと、ほとんどの人は比較的とおとなしく行列を眺めていたが、僕らはその場で体を揺らし、少し踊りながら楽しんだ。まあ、可も無く不可も無く、、、かな。それが僕の印象だった。もともと、パレード自体にそんなに期待はしていなかったので、別にそこまで関心を持っていて見ていたわけではなかった。

けれども、最後のグループが近づいて、パーカッション隊が叩き出すリズムが聞こえてきたとき、何かが変わった。自分の中で何かが反応する。体が自然と動き出す。踊らずにはいられない。突然目の前に光が差したような気がした。「これだ!」僕は一瞬にして何かを理解した。

そのグループが叩き出すビートは、今までのグループとは明らかに違っていて、力強く、うねるようなグルーブで、一段と生き生きしている。この音楽は一体何なのだろう。この血が騒ぐような感じは。。。

グループがだんだん近づいてくる。それにつれて、音量も増す。パーカッション隊は数十人いるだろう。それが目の前に迫ってくる。至福の瞬間。興奮は頂点に達する。

隣を見ると、リアたちも自然と踊っていた。自然と笑顔が漏れる。それを見て僕は、そんなふうに音楽と自然に踊りだすことのできる友達と一緒に来たことを嬉しく思った。考えてみると、それまで、そんな友達を持ったことは無かった気がする。道の両端にはたくさんの見物人がひしめき合っていたが、僕らのようにノリノリで踊っている人はほとんどいなかった。

彼女たちが踊っているのを見ると、あることに気づいた。踊り方が少し変わっていたのだ。よくクラブで見かけるような、上半身を激しく揺さぶる踊り方ではなく、上半身にはあまり力を要れず、腰を中心に足をすばやく動かすような踊り方だった。しかし、今はそのことよりも、何十人ものパーカッション隊が繰り出すリズムに興奮していた。

「このままこのグループを追いかけて行こうよ!そうすればずっとこの音楽を聞いてられる。」

僕は興奮気味に提案した。

「いいよ!ちょうどこの後Bellecourでコンサートもあるし。」

こうしてと一緒に踊りながら僕らは進んで行った。

そのグループは、独自のフライヤーを配っていた。僕らもそれをもらった。よく見るとそれは、そのグループは、Rio de Janeiroはるばるやってきたブラジル人たち。

「ねえ、この単語はなんて読むの?」

フライヤーに書かれている曲の歌詞を見て、僕はリアとタイッサ聞いてみた。

「sombra だよ。」
「sombra?」
「そう。ポイントはこの最後のaを弱く発音すること。」
(さっきのTaïssaと同じだ。。。)
「えっと、ポルトガル語だっけ?」
「そうだよ。ブラジルはポルトガル語。」
「なんかフランス語に似てるよね。」
「うーん。結構違うと思うけどなぁ。。。」
(いや、でもこの単語はフランス語だとombreだしな。。。)
「発音とかは、どうなの?」
「えっと、ポルトガル語の響きがは綺麗だって言うひともいるけど、私はよくわかんない。生まれてから使ってきた言葉だし。。。」
「発音は難しい?」
「まあフランス語に無い音もあるけどね。たとえばãoとか、ãeとか。。。」

はっきりいって、あまりよく分からなかった。それでも、今までまったく触れたことも、思いをめぐらせたこともないポルトガル語の響きや文章は、神秘的で、それでもなんとなく難しそうな感じがした。

夜になって、Bellecourでコンサートが催された。これもブラジル音楽で、そのコンサートは「Água de beber」と名付けられていた。「Água de beber」。リアはそのフレーズを何度か口にした。どこかで聞いた響きのような気がした。

僕らはさらにたくさんの友達と合流して、輪になって踊った。リアとタイッサはそこでも、あの特徴のある踊り方をしていた。

(まだこの時、僕は、例のリズム隊が奏でていたのが「Batucada」と呼ばれるものだったこと、そして、リアたちの踊り方はまさにサンバの典型的な踊り方であることを知らなかった。でも、次の日、興奮の覚めぬ僕は、友達に熱っぽく「ブラジル音楽はすばらしい!」と語っていたのを覚えている。)

posted by aye(あい) at 13:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ブラジルへの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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