2009年01月10日

あけましておめでとうございます

長い夜だった。

2009年1月1日、午前5時。人影まばらなリヨンの町を歩く。痛む足を引きずりながら。夜はまだ明けない。歩道の明かりが、路地をひっそりと照らしている。たまにすれ違う人々が、「良い年を!」とささやかな言葉を投げかける。

長い夜だった。大晦日の夕方、カフェで少しまったりし、別の友達の家で年越しをした。年末の過ごし方としてはそれだけでも十分だった。けれども、リヨンに残る他の友達たちにも新年の挨拶をしたくて、日付が変わってからさらに、町の中心部にあるアパートを訪ねた。

すべての友達がリヨンに残っていたわけではない。むしろクリスマスから年明けにかけて自分の国へ帰っている者が多かった。イタリア、ドイツ、ポーランド、フィンランド、カナダ、そしてフランス国内、、、彼らにとってこの時期は、家族と共に過ごす大切な時なのだ。

それでもリヨンに残る者もいた。リヨンに住んでいる者もわずかながらいる。そして大晦日までに戻ってきた者たちも。僕は、ずっとこの町にいたので、せめて何人かはそこにいて欲しいと思っていた。

4階にあるアパートのドアを開けて中にはいると、リビングにはよく知ったメンバーがいた。薄暗い部屋にろうそくの明かりが揺らめく。夜も更けて、ゆったりとお酒を飲みながら雑談している。そのひとりひとりに挨拶して回る。

「パリどうだった?」「良かったよ!歩きすぎてひざが痛いけど。。。」「どこ回ったの?」「いろいろ行ったけど、、、大きな古本屋とか素晴らしかったなぁ。。。大量に本を買ってきたよ。ほら、前におすすめしてくれやつあるじゃん。あれも買った!」

そういえば、そのおすすめの本を聞いたのは、初めてその子に会った時だった。4人のアパートに50人ぐらいがひしめき合う、やたらとにぎやかなパーティーだった。彼女は元々たくさん話すタイプではないし、あの頃は、会話もとぎれとぎれだった。そう考えれば、今では、ずいぶんと仲良くなっている。ケベック特有のアクセントも、今は心地よいと思うようになっている。

彼女だけではない。ここにいるメンバーは、そんな風に、何回か同じ場所で顔を合わせるうちに少しずつ仲良くなっていった人たちだった。

音楽のボリュームが上がり、誰かが静かに踊り出す。となりで話していた者たちも加わり、踊りの輪が広がってゆく。「ドイツ語では、「音楽に身をゆだねる」って言う言葉があるんだよ!ほら、こんな風に!」ドイツ人の女の子が、そばにいる男の子に踊るように促している。最後には、全員が踊りの輪に加わった。

このメンバーで踊りに行ったことは幾度となくあった。近所の小さなクラブが主な行き先だった。けれども、いつもどこか、いまいちみんな乗り切れないところがあった。それは、音楽のせいだったかもしれないし、どぎつい照明のせいだったかもしれない。でももっと、ほんの些細なことだったのかもしれない。

けれども、この夜は、自然とみんな楽しんでいた。不思議なつながりがあった。アパートの一室でラジカセから流れる音楽。ろうそくの静かな光。そしておなじみの顔。すべてが年の初めという特別な時と交わって、特別な時間を作り出していた。何か変わったことをしたわけではない。たぶんそれは、すごく繊細な条件の重なりだったんだと思う。でも確かに、そこにあったのはいつもとちょっと違う空間だった。

一年の終わりにそんな夜を過ごせたことが、とても嬉しかった。

(この夜、パレスチナではハマスの一1人のリーダーが殺され、バンコクのクラブでは火事で60人以上が死に、フランスでは例年より多い1147台の車が燃やされた。でもそれを僕が知るのはもう少し後のこと。)

午前5時、何かが動き始めた気がする。ゆっくりと眠りから覚めるように。まだ町はひっそりとしている。でも僕の新しい年は、確かに始まっていた。
posted by aye(あい) at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | リヨン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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