2003年02月06日

電車賃がなくなった日

あなたは町に買い物へ行った。たくさんショッピングを楽しんでさあ帰ろうと思う。

駅に着き、切符を買おうと思って財布の中を見ると・・・お金が足りない。

そんなとき、どうするだろうか?

あれはまだ夏だった。

ぼくはその日、横浜に出かけた。関内の有隣堂→桜木町の県立図書館→横浜のHMVと、いつものルートを巡るのである。

本屋さんに行くといっても、ただ見るだけで買わないことも多い。しかしその日は珍しく1万円近く本を買った。 

もちろん、売り場に踏み入るなりそそくさとお目当ての本を取って、すばやくレジへ向かうなどというスムーズな買い方はぼくにはできない。本を一冊一冊じっくり眺めて、延々と検討した後、覚悟を決めてレジへと向かい、途中で足を止め、再考しつつ、ええぃ買ってしまえ!と気合をいれて買うのである。

 有隣堂を出たときはもう夕方だった。そしてぼくは、おなかが空いていた。
ちょうどそばにファーストキッチンがある。普段そんなところで食事なんぞしないが、その安さと手軽さはこういうとき便利である。ぼくは130円のホットドックを食べることにした。

今思えば、このホットドックが命取りになったのである。

食べ物を食べ、元気を取り戻したぼくは桜木町へと向かった。図書館で本を借り、横浜へ向かう。

ところがそのとき、ふと、ある考えが、映像と共にぼくの頭に浮かんだ。

「・・・そういえば、ぼくの財布にもうお札はなかったな。本を買ったとき全部つかったから。それで財布はやけに軽かった。そうすると小銭は・・・もしかして・・・ちょっとまてよ。」

心配になったぼくは、鞄から財布を取り出した。

やっぱりお札はない。そうすると小銭は、いち、にい、さん・・・
合計150円。

必要な交通費は210円である。

60円足りない!

「・・・さあどうする。どこかお金が手に入りそうなところは・・・そうだ!自動販売機を見てみよう。」

ぼくは、途中で遭遇したすべての自動販売機の小銭受けに手を入れていった。
一度、手に触れる硬貨の感触があった。「・・・頼む、100円であってくれ。」
そう念力を込めて取り出したが、それは鈍い光をはなつ10円玉だった。

所持金額、160円。

あと50円をどこで手に入れるか。それが問題である。

そうこうしているうちに横浜につく。取りあえずHMVへいくが気休めにもならない。
時計を見ると19:30だ。
その間も、地面からは目を離さない。ひょっとしたらお金が落ちているかもしれないのだ。

「買った本を売ってしまえ」という声が頭に響く。しかし、せっかく買ったのである。なんとしても売りたくない。

「交番に行けば50円ぐらいくれるのでは?」とも思ったが、それは、あたかも金を貰うのが自分の権利だと主張しているようで、嫌だ。

最終的に、通りすがりの人にお願いしてみることにした。

「一瞬だけ物乞いになるみたいなもんだな」と思った。

さて場所は何処が良いか。道端で突然声をかけたら怪しまれるし、断られやすそうだ。

実は、インドで見た乞食ので大変参考になる例があった。彼らの中には駅の切符売り場にいる者がいる。切符を買ったとき、お釣りがでる。そのお釣りが貰えることが狙いなのだ。
しかも、お釣りが出なくとも、切符を買うときはお金を取り出す。お金を取り出しているときは、お金をしまっているときに比べて、お金を手放しやすい。面倒くささが全然違う。人間の心理を実にうまく分かっていて、なかなか彼らは賢いと思った。
さて、僕もそれを参考にすることにし、駅で切符を買う人にお願いしてみることにした。

だが、いざ切符売り場に行き、切符を買う人々を眺めていると、なかなか声をかけにくい。(こういう事が抵抗なく出来る人もいるのだろうな。)
誰に声をかけようか迷いながら、こんなことを考えた。
「やはり、同世代の人には頼みづらいなぁ。若い女の人にも声をかけにくい。変な誤解をされたらいやだもん。とすると、中年のおばさんがいいのか?いや、それもだめだ。ヤンキーっぽい人も論外だし。とすれば、やはりある程度年上のサラリーマンかなぁ。」

ということで、思い切って一人に声をかけた。

「すいません。50円足りなくて家に帰れないのですが、よろしければ50円頂けないでしょうか?」

ところが、彼は「いや、わたしも〜どうこうで〜云々」とよく分からないことをいい、ぼくは断られてしまった。

仕方ない、次の人を探そう。一度声をかけ、初めの一歩を踏み出したせいか、抵抗感は多少減っていた。

2人目は、普段着の中年の人だった。前回と同じようにお願いすると、財布をしばらくかき回し、「100円しかないなぁ」とつぶやいたあと、「まっ、いいか。やるよ。」といってその100円玉をくれた。
「あっ。お釣りありますよ」とぼくが言い終わらないうちに、彼はそそくさと去っていった。
こうしてぼくは、無事家に帰れたのだった。

めでたし、めでたし。
posted by aye(あい) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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