2002年06月20日

恐怖の犬達

それは、北インドの町、アジメールでのことだった。

時は朝5:00。ぼくは、電車に乗るために、駅へとむかっていた。もうこの町は出発するのだ。そしてムンバイへ行き、そこから日本に帰る。ようするに、ここがインドでの最後の町だ。

まだ外は暗い。この時間帯のせいか、あかりがまったく点(つ)いていない。本当に暗い。遠くのあかりをたよりに、かすかに道の輪郭が見える程度だ。

宿から駅はそれほど遠くなく、少し広い道を一本通り抜ければよい。迷わずその道を選んで、ぼくは歩き出した。肩にはリュックサック、手には25KG相当の荷物を引きずっていて、その上にちょこんと荷物を置いている。

足元を確認して、でこぼこした土の道をゆっくりと進み始めた。

ところが途中でギョっとした。犬だ。犬がたくさんいるのである。どうやら2つの犬のグループがいるらしく、道をはさんで互いに吼(ほ)えあっている。暗くてよく見えないが全部で8匹くらいのようだ。
ぼくはさらにゆっくりとした足取りで、吼えている犬達の間を通り抜けようとした。

ところがだ。ちょうど半部ごろまで進んだとき、ある異変に気づいた。犬の鳴き声がこっちにむかって聞こえる。おそるおそる振り向けば、犬達は、グループで吼えあうのをやめて、みんな一斉にぼくのほうにむかって吼えているではないか。さらに、姿勢はちょうど「よーい、どん」の「よーい」の状態だ。すなわち戦闘体勢である。

背筋に寒気が走った。

こんなところで死んでたまるか。ぼくは日本に帰るんだ。落ち着け、落ち着くんだ。ここで走り出したら彼らを刺激するだけだ。ここは平然を装って毅然とした態度で進まねば。「犬諸君!わたしはおまえらの平穏を乱したりはせぬ。安心したまえ。」

おそらく、ぼくの紳士的な態度と、人間としての高貴さに、犬が、ぼくに攻撃を加えることの愚かさを悟ったのだろう。ぼくは何事もなく、無事、道を通り抜けることに成功した。そして余裕の時間で駅に到着。予定通りだ。

ぼくは紳士的であることの大切さをかみして電車に乗り込んだ。
かくしてぼくは無事、恐怖の犬達からの生還を果たしたのである
posted by aye(あい) at 10:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。